契約書のチェックや作成についてのご依頼を受けることは多いです。
そこで、本稿では、取引における契約書の重要性、弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼した場合のメリットや費用、流れについて解説します。
契約書の重要性
事業活動する上で、「契約書」が必要となる場面は多々あります。取引先との契約書や顧客との契約書、社員との契約書など、その種類は様々です。
トラブルになったときなど、契約書は証拠となり得るものであり、逆に契約書に記載していない口約束などは証拠がないことにより無いものとして扱われてしまう可能性があります(口約束が「無効」という意味ではありません)。
契約書に記載しておけば、どのようなことでも有効というわけではなく、法律の規定により、当事者間の合意によっても覆すことのできないルールも存在します(「強行法規」といいます)。
インターネットを検索すれば、一般的な契約書を無料で取得することができますが、その内容が本当に当該契約の内容に合っているのか、一方に不利な内容になっていないかという点までは保証されていません。
したがって、契約書を取り交わす際には、細心の注意を払う必要があります。
契約書のリーガルチェック費用相場
スポットでの依頼の場合
内容によりますが、5~15万円の費用を申し受けています。
売買契約書、賃貸借契約書、請負契約書など典型契約の場合、5万円程度でお受けすることが多いですが、取引基本契約書や業務委託契約書など事業内容の理解が必要な契約書の場合には、10~15万円でお受けすることが多いです。
スポットでの依頼の場合、会社の事業内容から把握していかなければならない場合もあり、予想以上の時間を要することがあるためです。
顧問契約している場合
顧問契約している会社様からの依頼は無料となります。予め事業内容を把握しているため、契約書のチェックも円滑に行えるためです。
顧問契約のサービスは、月額3~10万円となっていますが、月額3万円のプランでも契約書のリーガルチェックは無料となりますので、スポットでの依頼に比べて使いやすいのではないでしょうか。
リーガルチェックのメリット
意味のある契約書にする
事業に関して取引する際、通常は何らかの契約書を取り交わすことが多いと思います。
もっとも、その契約書がインターネットで検索して入手したひな形であったり、何十年も前から使用しているものであることは多々あります。
この場合、現在の契約内容に合っていなかったり、契約内容が不明確で契約書の意味がなかったりすることも多いです。
そこで、弁護士のリーガルチェックによって契約書をアップデートし、万が一のトラブルの際に使用できる、意味のある契約書にしておく必要があります。
自社に不利な内容がないかチェックする
契約書の細かな条項を確認しないと、自社に著しく不利な条項が入れ込んであることがあります。
言われるがまま契約書にサインするのではなく、著しく不利な条項がある場合にはきちんと指摘して交渉した上で、妥当な契約内容を実現することが肝要です。
各種法令に違反する契約書をつくらない
契約書に記載しておけば、どのようなことでも有効というわけではなく、法律の規定により、当事者間の合意によっても覆すことのできないルールも存在します(「強行法規」といいます)。以下では、いくつか具体例を挙げて説明します。
民法
①個人の根保証
改正された民法によれば、個人の根保証契約は、極度額を設定しないと効力が生じないものとされています(民法465条2 )。
根保証とは、継続的な取引から生じる不特定の債務を保証するもので、例えば、賃貸借契約における連帯保証もこれに該当します。
民法改正前は、根保証では、保証人の負担する金額に上限がなく、保証人に過大な負担となることが問題とされていました。
したがって、賃貸借契約において、個人に連帯保証をしてもらう場合、契約書に連帯保証人が「一切の債務を負担する」といった記載をしても無効であるため、極度額を設定しておかなければなりません。
②事業のための貸金
主債務に事業のために負担した貸金債務が含まれるときは、保証契約締結日前1か月以内に作成された公正証書で保証人が保証意思を表示しないと保証契約の効力が生じません(民法465条の6)
(※保証人が主債務者の取締役、支配株主等の一定の関係があるときは、公正証書による保証意思の表示は不要です)
したがって、主債務に事業のための負担した貸金債務が含まれるときは、契約書に連帯保証人が署名捺印しても、それだけでは効力が生じませんので注意が必要です。
消費者契約法
消費者契約法8条1項1号は、「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項」を無効とし、
同項2号は、「事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項」は無効と規定しています。
すなわち、事業者対消費者において、事業者の債務不履行により消費者が損害を被った場合、予めその責任の全部を免除する契約をしても無効ということです。
また、事業者に故意又は重過失がある場合には、予めその責任の一部を免除する契約をしても無効ということです。
契約書で責任を免れる規定をおいても、必ずしも有効とは限りませんので、注意が必要です。
特定商取引法
エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室に関して、長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引については、特定継続的役務提供といって特定商取引法の規制が及びます。
例えば、上記取引について契約をした場合でも、8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、書面により契約の解除をすることができます(特定商取引法48条)。
したがって、事業者がこれに応じない旨を契約で定めたとしても、その契約は無効ということになります。
リーガルチェックの流れ
契約書案・契約内容のヒアリング
相手方から提示された契約書がある場合には、それを見せていただきます。
自社から契約書を提示する場合には、盛り込みたい事項をヒアリングします。もちろん初めから法的な表現である必要はなく、実現したい契約内容をお伺いできれば問題ありません。
お急ぎの場合もあるでしょうから、いつまでに完成したいというスケジュールも初めにお伺いします。
妥当性/法的に問題ないかの確認
相手方から提示された契約書がある場合には、各種法令に反する条項がないか、自社に著しく不利な条項がないか等を確認します。
自社から契約書を提示する場合には、ヒアリングした内容に沿って契約書を作成し、法令に違反するような内容があれば、事前に指摘させていただき、修正についてご相談させていただきます。
修正対応・完成
弁護士の方で作成・修正した契約書を見ていただき、修正しておきたい表現など気になる点を指摘していただき、仕上げていきます。
データでお渡しすることが多いですが、必要があれば製本した上でお渡しします。
まとめ
契約書の重要性や、弁護士にリーガルチェックを依頼した際の流れ等について解説しました。契約書は、一度締結してしまうと、その内容を変更することは難しいので、最初が肝心です。
弊所でも、契約書のリーガルチェックの依頼を受けることは多いため、費用感等についてはお気軽にお問い合わせください。頻繁にリーガルチェックの依頼がある場合には、顧問契約のサービスについても、ご提案させていただきます。