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2021.03.15

債権回収の可能性を高める民事執行法の改正

金銭の支払いを求める裁判で勝訴した後、実際にどのように金銭が支払われるか、皆さんはご存知でしょうか。

相手方が判決に従わない場合、裁判所が自動的に相手方から金銭を回収してくれるわけではなく、こちらで相手方の財産を突き止め、別途、強制執行の手続きを採らなければなりません。

この手続きを定めた法律が「民事執行法」です。

もっとも、強制執行する場合、こちらで相手方の財産を特定しなければなりませんが、相手方の財産状況を把握できていない場合も多いです。

そこで、令和元年、民事執行法が改正され、相手方の財産情報を得るための手続きが強化、新設されました。

以下、債務者に自己の財産を開示させる手続きである「債務者の財産開示手続き」と、第三者から債務者の財産情報を取得する手続きである「第三者からの情報取得手続き」について解説します。

改正された民事執行法の概要

令和元年5月10日,「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、令和2年4月1日から施行されています。

この改正で、相手方に自己の財産を開示させる手続き(財産開示手続)が見直され、第三者から債務者の財産情報を取得する手続きが新設されました。

その他にも新設された規定がありますが、本コラムでは上記の2点に絞って解説したいと思います。

債務者の財産開示手続き

強制執行するために必要な情報

相手方の財産に対して強制執行するには、裁判所に対して、強制執行の申立てをすることになるのですが、その際、債務者のどの財産を対象とするのか、特定する必要があります。

例えば、以下のとおりです。

  • 預貯金:金融機関名、支店名など
  • 給与:勤務先の名称、住所など
  • 不動産:所在、地番など

財産開示手続きに関する法改正

民事執行法では、相手方を裁判所に呼び出し、どのような財産をもっているのか裁判官の前で明らかにさせる手続きがあります。今回の改正では、この手続きがより強力なものになりました。

債務名義の種類を問わず、誰でも申立てが可能になった

これまでは、財産開示手続きの申立ては、金銭債権についての強制執行の申立てをするのに必要とされる「債務名義」のうち確定判決等を有する者に限定されていました。

「債務名義」とは、強制執行によって実現されるべき権利の内容などが記載された文書のうち、これによって強制執行することが法律上認められているものをいいます。

例えば、裁判所の確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、調停調書、公正証書などです。

今回の改正法では、上記のうち確定判決を有する者に限らず、仮執行宣言付判決や執行証書(公正証書)など強制執行に必要な債務名義を有していれば、誰でも申立てが可能になりました。

例えば、公正証書で支払いを約束した金銭が支払われなかった場合も、財産開示手続きの申立てができます。

債務者が裁判所に出頭しなかった場合の制裁が強化された

改正前は、正当な理由なく、期日に出頭せず、または宣誓を拒んだ場合や、宣誓した開示義務者が、正当な理由なく陳述を拒み又は虚偽の陳述をした場合には、「30万円以下の過料」という制裁が設けられていました。

これに対し、改正法は、上記の者への制裁として、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」を規定しています。

財産開示手続きは以前から存在したものの、相手方が出頭しない場合もありました。

このような非協力的な相手方に対する罰則が強化されていますので、心理的な圧力により開示の実効性が高まることが期待できます。

財産開示手続きの概要

管轄裁判所

債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所になります。

判決等に記載された住所から転居している場合には、転居先の住所を特定する必要がありますが、弁護士であれば、職務上請求によって住民票を取得することで住所を追跡することができます。

要件(執行力のある債務名義の正本を有する債権者の場合)

  • 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者であること(民事執行法197条1項)
  • 執行開始要件を備えていること(債務者に当該債務名義の正本又は謄本が送達されていることなど 民事執行法29条~31条)
  • 強制執行を開始することができない場合でないこと(債務者について,破産手続開始決定等がなされている場合は,強制執行を開始することができないので,財産開示手続も実施することができません)
  • 配当又は弁済金交付で完全な弁済を受けられなかったこと(民事執行法197条1項1号)、または、強制執行をしても完全な弁済を受けられないこと(民事執行法197条1項2号)
  • 債務者が申立ての日前3年以内に財産開示期日においてその財産を開示した者でないこと(民事執行法197条3項)

第三者からの情報取得手続き

概要

上記のとおり、強制執行をするには相手方の財産の情報を取得する必要がありますが、これが強制執行の一つのハードルになっていました。

そこで、改正法では、債務名義を有する者であれば、裁判所に申立てをして、債務者の財産に関する情報に関して、預貯金等は銀行等に対して、不動産は登記所に対して、勤務先は市町村等に対して、申立てに必要な情報を提供するよう命じてもらうことができるようになりました。

ただし、不動産と給与に関する情報取得手続きをとるには、事前に上記の財産開示手続きを行う必要があり、また、給与に関する情報取得手続きができるのは、養育費等の支払いや生命又は身体の侵害による損害賠償金の支払いを内容とするものに限られるなどの制限があります。

管轄裁判所

債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所になります。

判決等に記載された住所から転居している場合には、転居先の住所を特定する必要がありますが、弁護士であれば、職務上請求によって住民票を取得することで住所を追跡することができます。

要件

  • 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者であること。
  • 執行開始要件を備えていること(債務者に当該債務名義の正本又は謄本が送達されていることなど)
  • 強制執行を開始することができない場合でないこと(債務者について,破産手続開始決定等がなされている場合は,強制執行を開始することができないので,財産開示手続も実施することができません)
  • 配当又は弁済金交付で完全な弁済を受けられなかったこと、または、強制執行をしても完全な弁済を受けられないこと
  • 不動産情報,勤務先情報の申立てでは,申立ての日より前3年以内に財産開示期日における手続が実施されたこと

まとめ

裁判で勝訴したものの、実際にお金を回収することができないという事態は少なくありません。

今回の改正法によって、その回収の可能性が広がったといえます。

財産開示手続き等はご自身で行うこともできますが、手続きは決して簡易とはいえないことや、その後、判明した財産について強制執行の申立てを行う場合もあることから、弁護士に一任してしまう方が円滑かもしれません。

弊所では、訴訟から関与していなくても、上記の財産開示手続きや強制執行のみのご依頼も承っていますので、お気軽にご相談ください。

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