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2021.06.10

相続放棄とは?手続きの方法や効果、費用について解説

相続放棄とは、相続によって自らに帰属する権利義務を放棄し、わかりやすく言えば、遺産を一切受け取らないことをいいます(民法928条)。

「相続放棄」という言葉はよく耳にすることもあると思いますが、民法に規定された制度であり、手続きの方法や、どのような場合に相続放棄すべきか、手続きにかかる費用等についてご質問を受けることが多いため、解説しておきたいと思います。

相続放棄とは?

相続放棄の効果

相続放棄とは、相続によって得られる一切の財産(不動産や預貯金といったプラスの財産、借金などのマイナスの財産)を放棄することを意味します。

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになりますので、次の順位の者が相続人になります。

相続の順位について確認しておきますが、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の相続人の順位は、第1順位が直系卑属(子や孫)、第2順位が直系尊属(父母や祖父母)、第3順位が兄弟姉妹となります。

例えば、被相続人の配偶者が先に死亡しており、子が相続放棄をした場合、子の次の順位の相続人である直系尊属(父母や祖父母)が相続することになり、直系尊属がいなければ、その次の順位である兄弟姉妹が相続人になります。

他方で、被相続人の配偶者が存命で、子が相続放棄をした場合、配偶者と直系尊属(父母や祖父母)が相続することになり、直系尊属がいなければ、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。

代襲相続にはならない

被相続人より先に子が亡くなっていた場合、その子(孫)が相続することを「代襲相続」といいます。

相続放棄の場合、上記のような代襲相続にはなりません。子が相続放棄した場合、孫が相続人となるわけではなく、次の順位の相続人である直系尊属(父母や祖父母)が相続することになり、直系尊属がいなければ、その次の順位である兄弟姉妹が相続人になるので注意が必要です。

相続放棄の方法

手続きとしては、家庭裁判所に対して必要書類を添えて申述することになります。

家庭裁判所は全国にありますが、相続放棄の場合、相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所が管轄裁判所になります。

例えば、当事務所と同じ相模原市の場合、「横浜家庭裁判所 相模原支部」が管轄裁判所ということになります。

相続放棄の必要書類

家庭裁判所に提出する書類は、以下のとおりとなります。

例)申述人(相続放棄する人)が,被相続人の子の場合

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

裁判所に納める費用

  • 収入印紙 800円分(申述人1人あたり)
  • 連絡用の郵便切手(管轄裁判所に確認する必要があります)

相続放棄の申述期間

相続放棄はいつでも手続きできるわけではなく、行わなければならない期間があります。

民法上、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に申述しなければなりません。

また、被相続人の死亡日から3か月経過後に申述する場合には、自己のために相続の開始があったことを知った日を証する資料を提出する必要があるでしょう。

例えば、先順位の相続人が相続放棄した場合、この相続放棄時が後順位の相続人のために相続の開始があった時となりますので、このことを知った時が起算点になるでしょう。

判例では、3か月以内に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であるとしたものもあります(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁)。

相続放棄の申述期間の延長

上記の期間内に相続人が財産状況を調査しても、単純承認するか、相続放棄するか、限定承認するか決定できない場合には、家庭裁判所は、申立てにより、上記の3か月の期間を伸長することができます(民法915条1項ただし書)。

「限定承認」というのは、被相続人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続することを意味します。

この「限定承認」の手続方法や意義については、また別の機会に解説したいと思います。

相続放棄の証明

家庭裁判所によって相続放棄の申述が受理されると、「相続放棄申述受理通知書」が発行されます。

これは相続放棄したことを証明する文書になりますので、例えば債権者などから相続放棄の有無を確認された場合には、「相続放棄申述受理通知書」の写しを示すことが考えられます。

また、相続放棄の証明のため、「相続放棄申述受理証明書」の提示を求められることもあります。

これは、申請して初めて発行されるものになりますので、必要に応じて申請して取得します。

相続放棄の証明が必要な場面としては、上記のように債権者に示す場合や、相続登記の場合が挙げられます。

自身は相続放棄したものの他の相続人は相続放棄しないといったケースで、不動産の相続登記をする場合には、自身が相続人でないことの証明として、法務局に対して「相続放棄申述受理証明書」を提出することがあります。

相続放棄を弁護士に依頼する必要があるか

上記のとおり、手続き自体は誰でも行うことのできるものですので、必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。

ただし、必要な戸籍を集めたり、必要な記載事項を踏まえた申述書を作成しなければならないなど、それなりの手間はかかりますので、弁護士に依頼するメリットもあるでしょう。

仮に弁護士に依頼した場合には、戸籍など必要書類の取得から任せることができるので、ほとんど負担なく相続放棄の手続きを行うことができます。

当事務所では、11万円(税込)の手続き費用で相続放棄の手続きをお受けしております。

相続放棄の注意点

単純承認(民法921条)

相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときや相続財産の全部又は一部を隠匿したときなどは、「単純承認」といって、相続放棄することができなくなってしまうので、注意が必要です。

相続人全員が相続放棄した場合

上述のとおり、相続放棄した場合、初めから相続人でなかったことになりますので、次の順位の者が相続人になります。

その後、全ての相続人が相続放棄をした場合、相続人が誰もいないという状況になりますので、その際には、「相続財産管理人」の選任を検討することになります。

相続放棄をした場合、相続財産に関する権利義務を負うことはないのですが、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、すなわち、最終的に相続人が不在となった場合でも、相続財産管理人が選任されるまでの間は、自己の財産と同一の注意義務を負担することになりますので(民法940条1項)、相続放棄したからといって完全に負担がなくなるわけではないからです。

※民法940条1項「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」

相続が開始する前に相続放棄はできない

タイトルのとおりですが、被相続人が亡くなる前に相続放棄の手続きを取ることはできません。

まとめ

以上、相続放棄の方法やメリット、費用について解説しました。

相続放棄するか悩んでいる方、相続放棄したいがどのように手続きを取ればよいかわからない方など、お気軽にご相談ください。

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