「遺産分割調停」とは、遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合などに利用することのできる家庭裁判所の手続です。
申立ての方法
必要書類を家庭裁判所に提出することで手続きが開始されます。
無事に申立てができれば、裁判所から相手方に第1回期日への呼出状が送付され、答弁書等の提出が求められます。
必要書類(第1順位の相続人(子など)がいる場合)
- 申立書(裁判所のウェブサイトからもダウンロードできます)及び相手方の人数分の写し
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子が死亡している場合、その子の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の住民票又は戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書など)
費用
- 被相続人1人につき収入印紙1200円
- 連絡用の郵便切手(管轄家庭裁判所に確認する必要があります)
裁判所の管轄
相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所になります。
例えば、相手方の一人の住所地が相模原市の場合、「横浜家庭裁判所 相模原支部」で調停を行うことができます。
遺産分割調停当日の流れ
調停は、平日の概ね10時~正午、13時~17時のどこかで2時間程度行われます。
初回は、申立人、相手方双方が立会いのもと、調停委員から調停に関する説明を受けます。
双方立会いでの進行に問題がある場合には、裁判所に伝えることで、初めから個別に進行してもらうことができます。
その後、それぞれ別の待合室で待機し、調停委員から呼ばれたら部屋に入り、調停委員と話をし、部屋を出たら、他方の当事者が調停委員から呼ばれて部屋に入って話をするという繰り返しです。
調停は話合いですが、相手方と直接話し合うわけではないので、相手方との関係が悪くても冷静に協議していくことができるでしょう。
この期日が、1か月~2か月に1回程度のペースで開催されます。
基本的に調停委員と話をするのですが、調停委員は担当の裁判官と進行を協議しながら進めていますので、調停も裁判官が関与した手続きといえます。
調停が成立した場合の手続き
無事に相続人間の合意が形成されたら、裁判官立会いのもと合意事項が確認され、調停調書が作成されます。
この調停調書があれば、他の相続人の協力がなくても、単独で、不動産の名義変更や、預貯金の払戻しなど、現実的に遺産を分割する手続きが可能となります。
調停が成立しなかった場合の手続き
調停はあくまで話合いですので、話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に「遺産分割審判」の手続が開始されます。
「遺産分割審判」では、裁判官が、一切の事情を考慮して、終局的な解決となる審判をすることになります。
この「審判」があれば、上記の調停調書と同様、他の相続人の協力がなくても、単独で相続手続きが可能となります。
法律上は、初めから裁判所の判断を求めて「遺産分割審判」の申立てをすることもできるのですが、通常は、裁判所の判断で調停からスタートすることが多いです。
ちなみに、「審判」に納得ができない場合には、高等裁判所への「即時抗告」、「即時抗告」の決定に対しては、「許可抗告」、「特別抗告」という不服申立ての方法が用意されています。
調停で扱うことのできない問題
- 相続人の範囲
- 遺言の有効性
- 遺産分割協議の有効性
- 遺産の範囲
上記のような遺産分割の前提問題について争いがある場合には、調停ではなく訴訟で解決しなければならないので注意が必要です。
例えば、「遺言の効力」に争いがある場合には、「遺言無効確認訴訟」、「遺産の範囲」に争いがある場合には、「遺産確認請求訴訟」といったことです。
また、調停の際に議論されることの多い、「葬儀費用」、「債務」といった問題については、調停で議論することはできるものの、「審判」になった場合には、対象外となりますので注意が必要です。
相続人に行方不明の者がいる場合
遺産分割調停は、相続人全員が当事者になる必要がありますので、行方不明の相続人がいる場合には、手続きを進めることができません。
この場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらい、「不在者財産管理人」が家庭裁判所の許可を得て、不在者に代わって遺産分割等を行うことになります。
また、「不在者財産管理人」は無償で仕事をするわけではありませんので、基本的には、「不在者財産管理人」の選任を申し立てる者が、「不在者財産管理人」の報酬にあてるために、裁判所にお金を予納することが求められます。
遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット
調停はご自身で申立てを行うことが可能ですが、弁護士に依頼する人も多く、弁護士に依頼するメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
適切な手続きを選択できる
上記のとおり、遺産分割調停では解決できない問題もあり、この場合は別途訴訟等を起こす必要があります。
また、調停で議論できていても、審判に移行した場合には対象外となってしまう事項もありますので、頑なに合意しなかったために審判に移行させた結果、逆に問題を残してしまうこともあります。
遺産分割調停を弁護士に依頼すれば、状況に応じて適切な手続きを選択し、その後のリスク等も考慮しながら協議を進めていくことが可能です。
また、あくまで話合いといっても、自身の主張には法的な裏付けや証拠資料があった方がよいわけですから、この点においても、弁護士に依頼してサポートを受けるメリットがあります。
期日への出席を任せられる
調停は基本的にご本人にもいらしていただきますが、お仕事の都合やご体調など、裁判所に行くことが難しい場合には、調停期日には弁護士のみが出席することで手続きを進めていくことが可能です。
外出が難しい方には、弁護士からの報告や打合せについても、すべてメール等で行うことも可能ですので、極端な言い方をすれば、弁護士と契約した後は、一度も裁判所や事務所に行くことなく手続きを完結させることも可能です。
裁判所への申立ても円滑にできる
初めから相続人が確定できている場合はよいのですが、相続人が多数に及ぶ場合には、多数の戸籍を取得して、相続人を確定させなければなりません。
近くの市役所で戸籍が取得できればよいのですが、遠方の市役所で取得しなければならない場合には郵送で申請する必要があるなど、誰でもできるのですが、手間のかかる作業となる場合も多いです。
この点、弁護士は戸籍等の取得に慣れていますので、すべて任せてしまうことでご自身の負担を大きく軽減することができるでしょう。
まとめ
遺産分割調停について解説しました。
当事務所は相続関係の事件を多数取り扱っていますので、遺産分割調停の申立てを考えている方、遺産分割調停を申し立てられた方など、お気軽にご相談ください。
相続事件ですと、弁護士費用が高額になるのではないかとご心配される方もいらっしゃいますが、当事務所はなるべく最初にお支払いいただく着手金を押さえ、報酬金についても、どの程度になるか予めご説明いたしますので、納得した上で安心してご利用いただけるよう心掛けております。